凛人(りんと)♂
桜(さくら)♀




凛人「・・・ん」

桜「凛人・・・久しぶりだね」

凛人「桜か・・・2年ぶりくらいか?」

桜「しばらく会いに来れなくてごめんね」

凛人「気にすんなって」

桜「ずっと気になってたんだけどね・・・気持ちの整理がつかなくってさ」

凛人「じゃぁ、ここに来たってことは、整理がついたってことでいいんだな?」

桜「・・・そういえばね、私、昨日誕生日だったんだよ」

凛人「知ってるよ。おめでとう」

桜「もう20歳だよ?信じられる?あの時はまだ高校生だったのにね」

凛人「懐かしいなぁ・・・あの頃はただ単純に楽しんでたなぁ」

桜「時間が過ぎるのって、残酷なまでに早いよね」

凛人「まぁ、仕方ないんじゃね?時の流れは移りゆくものさ」


サクラノハナビラ


桜「覚えてる?私達が最初に会った時のこと」

凛人「最初って言ったら・・・入学式の時か?」

桜「凛人、あの時入学式に堂々と遅刻してきたんだよね。校長先生が話してる時に後ろから入ってきたときはほんとに何があったのかと思ったよ」

凛人「うっせぇなぁ・・・寝坊したんだよ」

桜「それから凛人は一気に学校での有名人になったもんねぇ。
  まさかこんな破天荒な人と同級生になるなんて!って思った」

凛人「それどころかクラスメートで席が前後だったもんなぁ」

桜「勇気だして振り返って話しかけてみたら初日から突っ伏せて寝ててさ」

凛人「まさか叩き起されて軽く説教されるとは思わなかった。
   なんだっけ。『初日から遅刻、さらに教室入ってすぐ寝るってどういうつもり?』だっけか」

桜「あの時なんであんなこと言ったんだろ私」

凛人「しるかよ」


少し笑い合う


桜「あ、クラスマッチの時の凛人、すっごいかっこよかったよ。
  今だからいうけど、あの時クラスの子みんな言ってた」

凛人「あー、バスケの時か。まぁバスケ部だったしな」

桜「いくらバスケ部って言っても三年生のバスケ部の人達もいたのに、圧勝だったもんねぇ。
  あれで先輩の顰蹙(ひんしゅく)買っちゃって」

凛人「まさか入院するまで殴られるとは思わなかったわ」

桜「凛人は入院、先輩は退学で、バスケ部は県大会を棄権。大問題だったよねぇ」

凛人「俺は慰謝料とか保険とかで美味しかったけどな」

桜「凛人、入院中、何回病院抜け出したんだっけ」

凛人「数え切れないくらいじゃね?暇なんだ仕方ないだろう?」

桜「看護師さんが可哀想だったもん。またあの子は!とか言ってたよ」

凛人「知ったこっちゃない」

桜「まったく・・・あ、ここ汚れてる」

凛人「ん?あ、わるいな。サンキュ」

桜「・・・よっと。そういえば奈々ちゃんのこと覚えてる?」

凛人「奈々・・・西岡か?」

桜「あの子、小岩君と結婚したんだよ」

凛人「おっ、まじかぁ。早いなぁ・・・
   ってか西岡って年上好きじゃなかったのか」

桜「あの数学の橋本先生にゾッコンだった奈々ちゃんがまさかねぇ・・・
  まぁ幸せそうだったよ」

凛人「結婚かぁ」

桜「結婚かぁ・・・私はどうなるんだろうなぁ・・・」

凛人「・・・いい人、見つかるだろ」

桜「あれから恋なんて全然してないもん」

凛人「整理したんだろ?一歩踏み出せよ」

桜「・・・二年生の時の修学旅行、楽しかったよね」

凛人「話そらしやがった・・・北海道行ったんだよな。10月に」

桜「折角北海道に行くなら、冬に行きたかったねぇ。
  それで、スキーをする!みたいな。
  なんで10月なのっ!ってみんなで言ってた気がする」

凛人「でも露天でホタテとか売ってて、あれはめっちゃうまかったな!」

桜「凛人はずっと食べ歩きだったし、班のまとまりなかったよね」

凛人「こっちじゃそう食えるもんじゃないだろ?」

桜「それも旅の醍醐味だもんねぇ。凛人らしいっちゃらしかったけど」

凛人「なんだよそれ、俺が食ってばっかの奴みたいじゃないか」

桜「あれだけ食べてたのになんであんな細かったの?意味がわかんない」

凛人「食っても太らなかったんだよ。好きで細かったんじゃないさ」

桜「あ、あとあれ覚えてる?紗耶香ちゃんが迷子になったの」

凛人「あー、ひとりで突っ走って乗るバス間違えて全く違うとこにいったんだよな」

桜「携帯で連絡とりながら、結局パトカー乗せてもらって帰ってきた時には笑ったよね」

凛人「待ち合わせ場所にパトカー来たときは何したのかと思った」

桜「でも泣いてる紗耶香ちゃん、かわいかったなぁ」

凛人「あー、あれは不覚にも可愛いと思った」

桜「あの子未だに彼氏いないんだよ?信じられない」

凛人「まじか、やっぱお嬢様は違うな」

桜「神社の子だもんねぇ。相手もやりづらいだろうし」

凛人「桜だってすぐ新しい人ができるさ。告白くらいされてんだろ?」

桜「・・・二年の最後に行った大学のオープンキャンパスで他校の生徒と凛人が喧嘩したの覚えてる?」

凛人「まーた話そらした・・・覚えてるよ。忘れるわけがない」

桜「私にナンパしてきた奴を凛人がボコボコにしたんだよね」

凛人「俺が隣にいるのにいい度胸だと思ったよ」

桜「あの時の凛人、かっこいいと思いながら可愛いって思っちゃった」

凛人「うっせぇばーか」

桜「誰の女に手出してんだ、とか言っちゃって。可愛かったなぁ。思わず照れちゃったもん」

凛人「その話はやめろ。恥ずかしくなってくる」

桜「まぁ、おかげでうちの学校の推薦はなくなったけどね」

凛人「申し訳ありませんでした」

桜「懐かしいなぁ・・・高校生の頃・・・」

凛人「・・・」

桜「あの頃は・・・ほんとよかった」

凛人「桜・・・」

桜「私・・・もう成人しちゃったんだよ?」

凛人「そうだな」

桜「もう・・・大人になっちゃったんだよ・・・?」

凛人「ああ・・・そうだな」

桜「それなのにさ・・・それなのに!」

凛人「やめろって」


桜「なんで!なんで凛人はもういないの!?」

凛人「・・・」

桜「ねぇ・・・凛人・・・会いたいよ・・・なんで一人で先に逝っちゃうのよ・・・」

凛人「ごめんな」

桜「・・・私のせいなのはわかってるよ」

凛人「違う。お前のせいじゃない」

桜「私があの時飛び出しちゃったから・・・!」

凛人「違う。俺が勝手に庇って飛び出しただけだ」

桜「トラックに轢かれて・・・!」

凛人「お前が無事ならそれでいいんだ。俺のことなんてどうだってよかったんだ」

桜「凛人が赤くて・・・!私わけわかんなくなって・・・!」

凛人「怖かったよな。ごめんな」

桜「なのに・・・!私の方見て、大丈夫か、だなんてっ・・・!」

凛人「あの時は、桜が無事でよかったとしか考えてなかったからな」

桜「凛人・・・忘れられないよ・・・凛人!」

凛人「桜・・・」

桜「はじめてこんなに人を好きになったの!
  泣いたり笑ったりいろいろあったけど、毎日がすごく楽しかったの!
  凛人がいて当たり前になってたのに、突然となりにいなくなって!
  寂しくて、寂しくて!なにもできなくなって!
  一度、私もそっちに逝けば楽になれるかななんて考えたこともあった・・・!
  でも・・・それじゃ駄目なんだってわかってるんだよ・・・
  私を守ってくれた凛人のところに行くのに、私が逃げちゃだめなんだって・・・
  だから私・・・決めたよ・・・」

凛人「・・・」

桜「・・・私・・・もう、一歩踏み出すよ・・・」

凛人「・・・おう」

桜「泣くのは・・・今日でおしまいにするって・・・決めてきたんだ」

凛人「そっか」

桜「もう・・・私・・・凛人から卒業するよ」

凛人「その言い方は、なんか寂しいな」

桜「20歳を迎えた昨日・・・凛人の命日の今日・・・私、凛人と別れる事にする」

凛人「むしろまだ付き合ってたのか」

桜「ごめんね?凛人。でも、この指輪は捨てないよ。
  私の誕生日にくれた、凛人の最後のプレゼントだもん」

凛人「サイズ、合ってなくてちょっと恥ずかしかったな。
   今もネックレスのまま、つけてくれてるんだな」

桜「ふふっ、それでね、私、幸せになって、おばあちゃんになって。
  それで家族に囲まれて息を引き取って、その時に、凛人に会いに行くの。
  凛人の分まで、幸せに過ごしてあげたよ!感謝しなさい!
  って言いに行くんだ」

凛人「ははっ、おー、楽しみにしてるよ」


桜「・・・聞こえてるかな。凛人」

凛人「ああ、聞こえてるよ。桜」

桜「・・・私、前を向くよ」

凛人「おう」

桜「もう・・・立ち止まらないよ・・・」

凛人「おう」

桜「だから・・・今日だけは・・・許して・・・」

凛人「仕方ないな。今日だけだぞ」


桜、泣き声


凛人「桜。お前の声、しっかり聞こえてるよ。
   俺の声、お前に届けばいいのにな。
   ごめんな?好きな人悲しませる男なんて、最低だよな。
   俺のことなんかさっさと忘れて、幸せになれ。
   ・・・なーんて思ってるけど、少しくらい、覚えててほしいかな。
   宣言通り、俺の分までちゃーんと、幸せになってくれよ。桜。
   最後に、俺からプレゼント」


風が吹く。
桜木から一枚、桜の花びらが、少女の前のお墓に降りる。


桜「さくら・・・りん・・・と・・・?」

凛人「がんばれよ。桜」

桜「・・・うん・・・私・・・がんばるよ・・・
  今までありがとう、凛人。
  大好きだよ・・・っ!バカヤロー!」



Fin



どうも。くぅ汰です。
またしてもサシ台本です。
サクラノハナビラ。
桜の一人言に、聞こえてない声で凛人が一人言で返すというお話です。
短い台本ですが、これは簡単に言えばAパートの台本となります。
近いうちにBパートにあたる台本を書けれたらな・・・!と思っております。
この台本を手にとってくださってありがとうございました。
楽しんでいただけなのなら、私は光栄です。
それでは、失礼します。